学修要項(シラバス)

講義科目(2)医学専攻博士課程

学群名:環境医科学群

科目名:法医学

英文名
Legal Medicine
科目概要
博士課程 環境医科学群 2単位 講義
開講期
2024年度以降開講予定
科目責任者
佐藤文子
担当者
佐藤文子・入江 渉・落合恵理子
授業の目的
法医学とは法に関する医学的事項を広く研究または応用する社会医学であって、いわゆる基礎・臨床医学の各論ではない。法律という系でまとめられた総合医学教育であって、その包括される分野は基礎・臨床を問わず広範囲にわたっている。医学、医療の著しい進歩発展に伴って、法に関係する医学的事項が医の倫理を背景として新しく提起され、脳死をめぐる死の判定や臓器移植などの人間の尊厳に関する諸問題が現代社会で重要な課題として論議されている。また一方、法医学の主な対象とされている遺体に関しても、日本における全死亡の約15%が異状死体として取り扱われ、その取り扱われ方、死因の究明等に多くの問題点を有しているのが現状である。さらに、医師の業務を規制する法律は、医師法、医療法、死体解剖保存法などをはじめとして、損害賠償請求や傷害などに関する民法、刑法の適応があげられ、これらの法律の数は300余に及んでいる。
 当該特論では、救急医学の進歩とともに、その取り扱われ方に問題がある外傷、内因性急死、CPAOAなどの異状死体について、臨床面を含め広い視野から捉え、その社会医学的意義を学ぶ。
教育内容
法医学全般が理解できるようにスライドを用いて講義を行う。法医学総論、異状死体の取り扱い、死体現象から死後経過時間を推定する方法、内因性急死、創傷の見方、交通外傷の見方、異常環境による死亡、DNA鑑定について学ぶ。実際の法医解剖に立ち会い、死後経過時間の推定方法、創傷所見の見方について学ぶ。
教育方法
対面での講義を行う。講義終了時に小テストを行い理解度の評価を行う(小テストはその場で返却、解説する)。レポートの場合には期日までに研究室(M1号館5階法医学研究室)入口の専用boxに提出する(メールでの提出も可)。希望者には解剖見学を実施予定。
授業内容(シラバス)
項 目
内 容
担当者
1
法医学とは
医学分野における法医学の立場、社会医学としての必要性と役割について
佐藤文子
2
異状死体
法医学で扱う異状死体とはどのようなものか、どのような問題が内在しているか解説する。
佐藤文子
3
死体現象ついて
早期死体現象・晩期死体現象について解説する
入江 渉
4
内因性急死①
突然死の原因となる内因性疾患について実例を交えて概説する。
佐藤文子
5
内因性急死②
突然死の原因となる内因性急死について実例を交えて概説する。
佐藤文子
6
創傷総論
様々な創傷について概説する。
佐藤文子
7
創傷各論
鋭器・鈍器などによる創傷について実例を交えて解説する。
佐藤文子
8
温度異常・電気などによる障害
異常環境下での死亡事例(火焔による死亡、熱中症、凍死等)について解説する。
入江 渉
9
窒息総論
窒息とは何か、その定義やメカニズムなどについて概説する。
佐藤文子
10
窒息各論
窒息を引き起こす様々な要因について、具体例を交えながら説明する。
佐藤文子
11
DNA鑑定①
DNAとは何か?どのような特徴があり、個人識別に利用されているのかを解説する。
落合恵理子
12
DNA鑑定②
DNA多型を用いた個人識別などについて概説する。
落合恵理子
13
薬毒物中毒
薬毒物中毒について概説する。
佐藤文子
14
児童虐待
児童虐待について、実際の症例を交えながら概説する。
佐藤文子
15
総合討論・レポート提出
法医解剖見学を行い、全体討論を行う。
佐藤文子
到達目標
(1)法医学と司法との係わりについて説明することができる。
(2)法医学の果たしている役割について理解し、その社会医学的意義を説明することができる。
(3)異状死体の死因究明に関する知識を修得し、説明することができる。
評価方法
小テスト・レポートなどの課題80%、平常点20%。提出状況および内容による評価を行う。
準備学習
(予習・復習等)
解剖学の復習、法医学の参考書を読んで予習をしてください。授業外学習時間:60時間
その他注意等
直前に講義内容、講師が変更になる場合があります。解剖見学実習は希望者のみ。詳細については後日メールにて連絡します。
教科書
特に指定しない(レジュメを配布します)。
参考書
『新訂 死体の視かた』渡辺博司、齋藤一之著 東京法令出版、『標準法医学』 池田典昭、鈴木廣一編 医学書院、『法医学』第3版 福島弘文編 南山堂