講義科目(1)医科学専攻修士課程
学群名:生体機能医科学群
科目名:細胞免疫学
英文名
Cellular Immunology
科目概要
修士課程 生体機能医科学群 2単位 講義
開講期
2023年度 前期
科目責任者
末永忠広
担当者
末永忠広・竹内恵美子・佐藤 雅・今西貴之
授業の目的
T細胞の分化・抗原認識機構、エフェクター機能の発現、自己寛容誘導・維持機構、自然リンパ球の分化と機能、自然免疫系の生体防御メカニズム、これら免疫系と免疫疾患や生活習慣病との関わりにおける病態解析の進展、感染症における宿主と病原体の相互作用などについてワンブロック3コマの集中講義形式で短期間にその概略を学ぶ。
教育内容
抗原提示とT細胞活性化機構、胸腺におけるT細胞分化とそれを支持する胸腺皮質・髄質上皮細胞の機能、T細胞亜群のエフェクター機能とB細胞の分化、さらにはそのマスター制御因子との関連について、#1〜3の講義で概説する。また、免疫寛容誘導とその維持機構と破綻に基づく自己免疫疾患については#4〜6にて、遺伝子再構成による受容体を持たない自然リンパ球(ILCやNK)、インバリアントなT細胞受容体を発現するNKT・MAIT・γδTなどの各自然Tリンパ球の分化と機能、特にNKT細胞と生活習慣病や腸内細菌との関連などについて#7〜9で議論する。さらに、免疫の本質である病原体などの異物や腫瘍への応答、免疫機能の過不足によるアレルギー・自己免疫疾患・免疫不全症については#10〜12で、TLRをはじめとした自然免疫系のパターン・ダメージ認識受容体による病原体認識から自然免疫の機能と関連する疾患についてを#13〜15で取り上げる。
教育方法
担当教員の資料に基づいた講義、最新の原著論文の紹介と精読を対話・討議形式で行う。受講者は、輪番制で情報提供側としてプレゼンテーションを行って、研究手法・結果とその解釈について説明することによってアウトプットの訓練を行う。担当回以外についても、対話・討議への参加(データの解釈・質問など)を通じて科学的な思考を錬成する。
授業内容(シラバス)
回
項 目
内 容
担当者
1
T細胞免疫応答の基礎と展開(1)
樹状細胞、マクロファージのサブセットと機能
末永忠広
2
T細胞免疫応答の基礎と展開(2)
T細胞の分化・成熟における胸腺上皮細胞の役割について
末永忠広
3
T細胞免疫応答の基礎と展開(3)
T細胞とB細胞サブセットの分化制御と機能
末永忠広
4
自己寛容誘導とその維持機構(1)
中枢性・末梢性寛容誘導機構
竹内恵美子
5
自己寛容誘導とその維持機構(2)
調節性T細胞
竹内恵美子
6
自己寛容誘導とその維持機構(3)
好中球と自己免疫疾患
竹内恵美子
7
自然リンパ球の分化と機能の生理・病理(1)
自然リンパ球の分化と機能
佐藤 雅
8
自然リンパ球の分化と機能の生理・病理(2)
自然リンパ球と生活習慣病
佐藤 雅
9
自然リンパ球の分化と機能の生理・病理(3)
自然リンパ球と腸内細菌叢
佐藤 雅
10
免疫疾患の病態とその解析(1)
免疫と病原体の攻防
末永忠広
11
免疫疾患の病態とその解析(2)
アレルギーの4型と免疫不全症
末永忠広
12
免疫疾患の病態とその解析(3)
腫瘍免疫学とその新展開
末永忠広
13
自然免疫の機能と分子機構(1)
自然免疫と病原体センサー
今西貴之
14
自然免疫の機能と分子機構(2)
自然免疫の分子メカニズム
今西貴之
15
自然免疫の機能と分子機構(3)
自然免疫と疾患
今西貴之
到達目標
自然免疫と獲得免疫、パターン認識受容体とリガンド認識、免疫担当細胞の分化と機能、遺伝子再構成による抗原受容体の生成、抗原の細胞内トラフィックと提示様式、抗原提示細胞とT細胞の抗原認識、細胞内シグナル伝達、サイトカインによる細胞間相互作用、ヘルパーT細胞の分化と免疫偏倚、キラーT細胞の機能発現調節機構、免疫寛容の誘導と維持機構といった免疫生物学の知識習得した上で、感染免疫、アレルギー・自己免疫疾患・免疫不全症・腫瘍免疫など免疫と各病態の関連性を理解し、新たな研究を立案・実行する。
評価方法
担当回におけるプレゼンテーションの出来とハンドアウトの完成度(70%)、授業部分における問題提起に対する参加と応答内容(20%)、コミュニケーションペーパー(10%)を総合的に評価する。
準備学習
(予習・復習等)
(予習・復習等)
学部において免疫学を履修していない学生は入門的な参考書(『免疫−からだを護る不思議なしくみ』(東京化学同人)・「基礎免疫学」(エルゼビア)など)を一読してから参加することを勧める(既習者で2時間、未習では10時間〜)。また、事前に論文が渡されたら、担当回では論文読解に10時間、引用文献に当たるのに10時間、内容の解説(ハンドアウト)作成に10時間がかかるとこれだけで30時間が必要である。また担当でない回でも論文を読んで理解するために2時間の学習が授業時間外の準備に(計60時間〜)が必要となる。
その他注意等
論文は講義のときに次回分(3連の講義用に)に渡す予定であるが、最初の講義用には研究科教務係もしくは電子メールを通して配布する予定である。新型コロナウイルス感染症の蔓延次第ではZoom開催になる可能性もある。
教科書
教員作成の講義資料もしくは論文等を用いる。
参考書
JANEWAY'S IMMUNOBIOLOGY 10th ed. (邦訳 JANEWAY'S 免疫生物学 第9版 (南江堂))